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ひとりごと ~障害・福祉・医療・子育てを考える~

発達障害の子を持つ親として、また医療・福祉・介護にかかわる仕事を 通 して感じたことをつづるブログです.

「虐待」の通報

 これまで一人暮らしだった高齢女性(90代)都会から娘さんが戻ってきて一緒に暮らして数年。
 
 あるとき、近所の人から「娘さんが母親を叩いている」「おばあちゃん(母親)がうちに来て、『ご飯食べさせてもらっていない』と言う」といった「虐待(疑い)の通報」がはいりました。

 認知症が進んできたため、同居をはじめたのですが、もともと娘さんは母親とは性格が会わずに、社会人になってからはずっと家を離れて生活してきました。介護保険も申請し、週1回デイサービスと娘さん不在時の訪問介護を利用することになりました。
 
 担当のケアマネジャーには、「もともと母は兄や弟ばかりを可愛がって、私は可愛がってもらった記憶がない。だから母親と言ってもあまり愛情がわかないし、自分のいうことを聞いてくれるような母ではない」と言ったそうです。

 しかし、認知症も進み、娘さんの介護(食事の世話や衣服着脱の介助など)が必要であるにも関わらず、実生活では娘さんの作った料理をまずいといっては鍋ごと捨てたり、食事を与えているのにも関わらず周囲には「食べさせてもらっていない」と触れまわったり、衣服を着替えさせようとしてもがんとして拒否したり、あげくには汚れたおむつも替えさせてもらえず、新しい下着を買って与えてやっても、着替えも拒否しデイサービスには穴のあいた下着や汚れた衣服、失禁したままのおむつをはいていくこともあったようです。
 こういうことがあるとデイの職員からも、「家族からネグレクトされているのではないか?」という疑念を抱かせるような光景かもしれません。

 デイサービスでは「娘に叩かれるから家に帰りたくない」という言動が聞かれたとケアマネジャーに報告があったようでしたが、あえて「虐待」ということでなくそのまま様子を見ていたようです。担当のケアマネジャーさんも家庭の事情を知っていたこともあります。
 しかし、「通報」があった以上は、虐待のマニュアルに従って、ケアマネジャーさんに確認したほかに、「事実確認」のため、デイサービスにいるご本人に面接を行うことになりました。
 
 しかし、認知症もあるため、自分の発言した言葉の本意を確認しようとしても、話が合わず、その時はそのような発言が聞かれませんでした。
 デイサービスでは職員が言うには「みんなと一緒に楽しんでいるし、排泄介助もさせていただいている。」ということでしたが、自宅では訪問するヘルパーさんの話では「かわいくないおばあちゃん」「おむつが濡れていても替えさせてもらえない」という評価だったそうです。
 外部のスタッフにの介助にも抵抗するとあれば、娘さんの介護にはなおさら反発をしているのも理解できます。だから、娘さんは年中ストレスがつのり、自分の時間も必要と時々家を空けてストレス発散をしないと気がもちません。

 認知症を抱える家族は大変です。ましてや本人の外面はよくて、家の中では「わがまま」と思えるふるまい(認知症と性格からきている・・・今までの性格にさらに輪をかけて現れてきやすいから・・)自分の意のままに動いていれば、周りの人の評価と家族の評価には大きなギャップが生じてきて、何も知らない周囲の人からは「家族が悪者」という目で見られがちです。
 
 虐待の通報があった場合、通報者はどちらかと言えば高齢者寄りの立場に立って通報してくるのですが、娘さんが「手をあげたくなる気持ち」も話を聞いて行くと心情的には察するにあまりあります。
 担当のケアマネジャーさんやデイサービスの職員さんたちは、だいぶ前から母親の気の強さと、娘さんとの折り合いがうまくいっていない(多分に母親の気質や性格の問題)ことも知ってはいましたが、事を荒立てることなく様子を見てきていたのでした。しかし今回このような通報をうけたことで、ケアマネジャーさんからも利用者支援だけでなく、養護者支援の立場からも関わっていただくようにお願いしました。


 いわば娘の介護に感謝することすらなく、逆に「自分はまだまだ一人で何でもできる。誰がお前(娘)なんかの世話になるもんか」という高齢者自身の思い。そこに子ども時代からの母子関係が色濃く影響しており、AC的家庭環境での育ちだったのだろうかと思わせられるような二人の親子関係が垣間見えます。

 親子関係って、本当にあとあとまで影響しますし、ましてや一方が認知症にでもなればなおさら、これまでの親子関係が浮き出た形で現れ、時として虐待ケースとして取り上げられたりする場合があるのです。

 地域の中で、当事者の家族(娘さん)の心情も察した関わりがあれば、「虐待しているのでは?」などと通報されることもないのだと思いますが、娘さんも都会で定年になってから戻ってきて、あまり本音で悩みを打ち明けていなかったこともあり、周りの人たちには「家の事にはあまり口を出さないで」という態度で接していたこともあり、この母親に同情してしまい娘さんが「悪者」のようになってみられているのだろうかと思われました。
 今は、本人たちの知らないところで、民生委員や行政の窓口にそれぞれの「家庭の事情」が「通告」されるようにもなってきている時代です。

 「虐待防止法」ができたためのこともありますが、介護をしていれば中には言うことを聞かなくてストレスになってしまい、つい叩いてしまったということも無きにしもあらず・・。
 そんな家族事情はこれまでだってどこの家庭にもあったはず。決して叩いてしまうことを擁護するわけではありませんが、そうしたくなる思いにも周囲の人たちもきちんと寄り添ってあげれば、何もわざわざ公の場に「通報」などということもないのだろうと思うのです。
 しかしそういう手間暇かけた付き合いの希薄さもあり、そういうこともいちいち「虐待」というくくりでとらえられてしまうことへの違和感もぬぐえません。

 
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